2009.10.26 Mon
10月8日のコラムで書いたのですが、グーグルが進めるプロジェクト「ブックサーチ」が世界中の作家や出版業界を巻き込んで大問題になっています。「グーグルが複数の図書館と提携して蔵書をスキャン。米国内で流通していない書籍は、著作権保護期間内であっても全文の閲覧を可能とするもの(日経ビジネスON LINE)」で、これに対し「米国で全米作家協会と全米出版社協会が訴訟を提起。2008年10月に『商業利用の収入の63%を権利者に支払う』『無断でデジタル化した書籍について、1冊当たり60ドル支払う』『米国内で絶版または市販されていない書籍については、データベースに組み入れる』などを骨子とする和解案」が出たのですが、「世界の著作権者を巻き込む大騒動になったのは、『ベルヌ条約』という国際的な著作権に関する基本条約があるためだ。和解案の対象は『米国著作権を有するすべての人物』。ベルヌ条約で日本の著作物は米国でも著作権が発生しているため、自動的に日本の著作権者が和解に組み入れられた。異議がある場合は自ら申し出ねばならない」のです。つまり、異議を申し出ない場合は、グーグルはどんな長編作品でも1作品60ドルさえ支払えば、全文デジタル化できてしまうということです。確かにグーグルにとって都合がよすぎる和解案です。著作権の問題は、作家の経済的な権利を守ることと社会的な知的財産として有効活用することの間で、なかなか基準が定まっていません。私は、本を買うときだけは新刊本を買うようにしています。なぜなら、作家は一人で原稿用紙かパソコンに向かって孤独な執筆作業をして作品を生み出しているのですが、それが戯曲なら上演されることで目にし耳にすることもできますが、小説や評論、詩などは、出版されない限り人の目に触れることがないのです。本となって売られて、初めて作家に原稿料が入ってくるので、その本をオークションや古本屋で買った場合は、作家には創作のための労働の対価が還元されないからです。私も、音楽CDや映画のDVDは、普通にオークションで買っています。映画や音楽だって同じだろうとは思うのですが、私の気持ちの中では、本だけが特別なのです。本がなかなか捨てられないことや本をまたいではいけないとしつけられたことも関係しているのかもしれません。CDやDVDは記録媒体でしかなく、音楽家や演奏家、歌手、映画監督、俳優なども、一つの作品を作るに際して、それなりの労働をしているので、映画が映画館で上映される限り、音楽がライブで演奏される限り、正規の入場料を払って鑑賞することに何ら異存はありません。ただ、デジタルメディアになった作品は、私の中では再販可能な商品の位置づけになっています。映画会社やレコード会社(今時レコードでもないでしょうが、なぜか音楽CD会社とはいいませんね)は、上映したり上演した時点でしっかり儲けているだろうから、これ以上儲けさせる必要はないだろと感じてしまうのです。この感情のルーツは、輸入盤と国内発売のCDで値段が違いすぎることに疑問を持ったことが端緒のようです。大量に複製されて販売される商品であれば、その中古品を安く買うことに何ら引け目を感じる必要はないでしょう。逆に言うと、グーグルも本を無断でスキャンして公開するだけでなく、DVDになっていない映画やCD化されていない音楽をばんばんWEBで無料公開してくれるのなら、ま、いいかってことに・・・ならないよね。