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2008.05.23 Fri

河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)の没後120年記念特別展が、ついこの前まで京都国立博物館でやっていました。見に行こうと思っていたのですが、結局見そびれてしまったので、「河鍋暁斎没後120年記念 絵画の冒険者展」の図録をYahoo!オークションで手に入れました。この河鍋暁斎という画家というか絵師は、北斎と並んでヨーロッパでは有名だったらしいのですが、日本の中学や高校の美術史の授業では絶対に教えないと思います。それにしても、この独特の画風はどこから生まれたのでしょう?狩野派と浮世絵とポンチ絵のミックスジュースといったところ。何しろ美人画、武者絵、幽霊画、妖怪百鬼夜行図、地獄絵図、動物画、戯画とそのレパートリーの広さにも驚くのですが、それぞれが、まさに「神は細部に宿る」筆致というか描写力でした。図録では実際の絵のサイズは分からないのですが、実物はもっと迫力があるのだろうと思います。ところで、この画家は美人画と同じくらいの情熱を込めて、亡者、骸骨、幽霊、閻魔、鬼、妖怪といった異形の者たちを描いています。しかも、単に恐怖心を煽るだけでなく、(さすがに幽霊や死体を描いたものは不気味なのですが)ユーモラスな面を強調したものが多く、特に閻魔や風神雷神といった、これまでの日本画の世界では絶対的な権力者、魔物あるいは神と言う位置づけだった存在の弱点というか人間らしさ(というのも変だけど)にスポットを当てています。閻魔は綺麗なおねーちゃんの前でたじたじとなり、風神は鷹に追いかけられて慌てふためき、骸骨は三味線を弾いていたりします。有名な鳥獣戯画と同じモチーフの動物や虫の戯画も面白いのですが、気に入ったのは地獄極楽巡りの絵です。極彩色のパノラマ写真のような画面は豪華絢爛。この絵を眺めていて、DVDで聴いた桂枝雀師匠の「地獄八景亡者の戯れ」という落語の大作を思い出しました。地獄を陰惨なところとしては描かず、とことん関西ノリの脳天気な登場人物ととんでもない場面設定で、ご陽気に、馬鹿馬鹿しく地獄ツアーを描き切った噺です。日本人の中に脈々と流れる諧謔精神は、大衆芸能の分野で遺憾なくその真価を発揮するようです。広告もターゲットは一般の人々であり、広義には大衆芸能のようなもの。諧謔精神あふれる面白い広告をもっと見たいものです。ところで、この図録には春画は1点も掲載されていないのですが、きっとこのオヤジ、春画もいっぱい描いていると思います。